BABYMETALが世界で成功した理由
- BABYMETALが世界で成功した理由
僕が思う成功の理由をざっくり言うならばコバメタルがメタルをよく理解していた。メタルと本気で向き合ったと言う事だと思います。
メタルと一言で言いましても40年以上の長い歴史がある訳であります…ビートたけし島田紳助よろしく80年代の漫才ブーム時のスラッシュメタル(これも80年代)のようなスピードを極限まで追求した喋くり漫才が今ウケるか?マスにはなるか?といったら難しいだろうと思います。そこには年月を経た進化、多様化がある訳です。ダウンタウンがいてスリップノットがいるわけです。若手もドンドン出てきますしチャグやジェントといった新しいメタルの要素も出てきます。どの部分をフックアップしていけば世界で受けるような現在進行形のメタルサウンドになるかってことが分かってないとダメなんです。いかにアイドルとの融合といっても80年代90年代的な音感覚だけでメタルを作ると「あの頃をもう一度的」になってしまい古いわけです。全体を見れる感覚が無いとダメでそれは一つのフレーバーとして考えなきゃダメ。いわばパズルのピースを嵌めていくようなもの。
その上で日本にいる優秀な人材(日本にいた)を選びコバメタルがBABYMETALをブランディングした。このキュレーション能力。
斬新なコンセプト(アイドルとメタルの融合、海外から見ればWTF Japan Seriously!?なネット的インパクト)で競合と差異化しメタルと本気で向き合った(人材選び)。
これが最大の成功の理由で柱だと思います。そっからは全て結果論だと思ってます。(日本は技術はあるけどブランディングはイマイチなものが多いかなぁと思うんですがBABYMETALは日本のものづくり的に見ても成功例なんじゃないかとか思ったりします。)
- BABYMETALは海外向けか?
BABYMETALは日本の市場向けにしなかったから成功した、KARATEは海外向けに特化した曲だとかなんとか言われてたりしますが僕はそう思わないんです。
海外向けというかメタルと向き合ったらメタル自体がグローバルな音楽なので結果的にそうなった、ならざるを得ないという感じがします。
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- 日本人の海外進出
ONE OK ROCKは日本で成功し海外(狙うはアメリカ)に挑戦していますがそのやり方はアメリカのポストハードコアシーンの人気バンドissuesやSleeping with Sirensとコラボしながら、どちらかというとティーン向けのシーンに入っていって認知されようとしています。日本のバンド(枠の外)を前面に出す訳ではなくあくまで世界のポストハードコアシーンの一部になろうとしてるわけです。ジャンル分け的にJ-ROCKや日本のラウドロックと言うよりシーンの一部になることでワールドワイドな感覚で捉えてもらえるようにしてるのではないかと思います。
crossfaithも似ています。UKで下積みをしてキャリアを積みレイブ、エレクトロとメタルコアを高いレベルで融合させたオリジナルな音と圧倒的なライブパフォーマンスで成功しました。日本人であると言う事は関係なく色眼鏡一切無しのメタルコアバンドとしての成功です。
僕は日本人が世界で勝つには海外のモノマネの域を出ない「世界標準」ではダメでオリジナルな要素を組み込んで「世界標準の上」をいかなくてはダメだと思ってますがcrossfaithは上を行きました。
BABYMETALはどうでしょうか?海外での下積みなしでギミチョコがネットでバズった勢いのまま色眼鏡かけまくった状態でいきなりメタルフェスです(アニメ系のフェスはカウントなし)。
いきなり大勝負中の大勝負です。ナメック星に着いていきなりフリーザです。100パーセントフリーザです。負ければ海外ではジャパンエキスポ系に出るぐらいでメタルフェスには呼ばれないでしょう。そこで勝ちました。小便のペットボトルを投げつけられることなく歓声を帯びました。大勝利です。チャクラ全開です。
近田春夫さんはバックバンドの功績を成功の要因に挙げていましたが海外進出で大切なのはライブがいいかどうかだと思います。もう簡潔に歌唱力演奏力パフォーマンス力です。音的なアイディア勝負、アイドルとメタル合わせました!だけではギミックです、ソニスフィアでは勝てません、届きません。不完全を楽しむ日本的育成型アイドルは歌唱力演奏力パフォーマンス力が低くアイディア勝負のみでアニメフェス以外でやるには実力不足感は否めませんがBABYMETALは違いました。
完全に日本のイロモノバンド(枠の外)としてメタルシーンに乗り込み実力で徐々に認めさせていっています。
それと同時に(枠の外)であるが故の多様性を持っているのでBABYMETALそれ自体が一つのシーンを形成しているかのようです。
アイドルという要素がメタルを拡張させているのです。
BABYMETALは「世界標準」ではなく「世界標準の上」でもなく「世界標準の斜め上」にいきました。
では最後にジョブズ語録をば…
消費者に、何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。
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BABYMETALとは何か
ライムスター宇多丸師匠の言う日本型アイドルの広い定義は
「実力を魅力が凌駕している存在」。なおかつ「実力と魅力の差がある分をファンが『無償』の行為に基づく応援で埋める」。この定義に基づいていうと
BABYMETALはどうだろうか?
ユイメタル、モアメタルだけならこの定義に当てはまると思う。
だがスゥメタル(中元すず香)と言うアクターズスクールで学び、その中で歌の評価の高かった実力あるボーカリストがいることにより日本型アイドルの枠に収まり切らない安室奈美恵的90年代的アーティスト指向、スキル主義が持ち込まれていると思う。
AKBのような才能の有無をこちらが見出す育成的な物の見方ではなく既に見出された才能がベースにあり完成されているもの(素材)がある。
そしてこの3人のダンスユニットだけでなくバンドがいると言う構造。それもただのバンドではなく間違いなく本物の実力があり有無を言わさぬ圧倒的なスキルをもったメンバーがいる。このメンバーがいる事の音の説得力、圧というものはそれ単体でも凄まじいものがある。
それと作曲陣。
ゆよゆっぺ(メギツネ、KARATE)という人は初音ミクでラウドロック全般の音に日本語の歌を乗せた曲を多く作っている。言ってみればBABYMETALが出来る前からメタル、ラウドロックとアイドルとの融合の実験は積み重ねられていて初音ミクがリアルになったようなものである。BABYMETALの下地は既に出来ていた。
BABYMETALが世界的にバズる要因ともなった曲ギミチョコを作曲した元THE MAD CAPSULE MARKETSの現AA=の上田剛士(泡玉フィーバー)というオリジナルが日本にいた事もデカい。世界中見渡してもこれほどポップセンスがありインダストリアルでデジタルロック、パンク、ミクスチャーなオリジナリティのある音作れる人材はいない。これがベビメタに完全にハマりBABYMETALのオリジナルとなった。
物販のTシャツのデザインを見ても本物志向、本気度がうかがえる。デスメタルバンドのジャケットを数多く担当しているブルータルでゴアな絵を描く江川敏弘という本物を起用している。
先日出たBABYMETAL『METAL RESISTANCE』を聴いてここに含まれるメタルのジャンルをざっと言うと
メロスピ、ニューメタル、メタルコア、スカ、バトルメタル、インダストリアル、デス、プログレ、マスコアからブリングミーザホライゾンのような現在進行形のポストハードコア(ダブステップ、EDM含む)などがある。
これほどのメタルジャンルの横断を出来るアーティストは世界にいない。唯一無二である。
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BABYMETALには物語性(アイドル的)もある。
メタルを知らなかった3人の女の子が世界に出て色んなものと対峙して成長していく物語。
アイドルとメタルの融合という禁忌を犯した者がTHE ONEを目指す物語。
こういった要素が重なり合ってBABYMETALがある。言うなればBABYMETALとはコバメタルがキュレーションしたアイドルとメタルラウドロック(コンポーザー、プレイヤー、アートワーク)のオールジャパンなのである。そのメンバーが世界の土手っ腹に一発入れようとしている。
これは人材がいないと成り立たない。世界に認められるような高いレベルにある人材が日本にいたと言う事は素晴らしい事で日本の誇りだと思う。
個人的にメタルかメタルじゃないかアイドルかアイドルじゃないかというのにはあまり興味が無い。ラップとメタルを合わせたミクスチャーはラップかメタルかどうかを言っているようなものだと思うので基本的に音楽を”更新”できるかという所に興味がある。
それも日本が先だって新しい概念や音が出来るかどうか。似たようなリフがあって似たような歌い回しでファッションも海外の模擬っていう二番煎じでは無く。
オリジナリティ ここが一番。
結局、無理を通して道理を蹴っとばしてるやつが理屈抜きにカッコイイ。
まぁ、そういうのひっくるめて一言で言うとBABYMETALっていいよね~(笑顔)ていう そういう事です。